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見積り設計にあたっての確認事項

火災保険における保険の対象について

「保険の対象」とは、保険を掛ける対象物のことをいい、以下の物があげられます。

専用住宅

  • 建物
  • 家財
  • 明記物件

併用住宅(店舗兼住宅など)

  • 建物
  • 家財
  • 設備・什(じゅう)器
  • 商品・製品
  • 明記物件

専用店舗

  • 建物
  • 設備・什(じゅう)器
  • 商品・製品
  • 明記物件
  • 建物には、門、塀、垣や外灯等の屋外設備装置、物置・車庫等の付属建物も保険の対象に含みます。
  • 明記物件とは「1個または1組の価額が30万円を超える貴金属、書画・骨董品・美術品等」をいいます。明記物件については、別ページで詳しく解説いたします。

火災保険でいう「設備・什(じゅう)器」とは、建物内の仕事で使用する設備のことをいうため、当然、専用住宅には存在しません。反対に、「家財」は居住用建物で使用される家財道具を指すため、専用店舗には存在しません。居住部分の無い事務所や店舗でテレビや冷蔵庫等を使用していても、それは「設備・什(じゅう)器」となります。

住居用の戸建やマンションを購入したときには、一般的に「建物」および「家財」を保険の対象とした火災保険に加入します。
火災等の事故が発生し、建物が焼損してしまった場合、建物内にある家財にも当然被害が生じます。同じ生活を再スタートすることを考慮すると家財についても保険の対象とすることが望ましいといえます。

尚、賃貸住宅を借りる場合の火災保険では、「建物」は保険の対象とはせずに、「家財」のみを保険の対象とした火災保険に加入します。なぜなら、建物は自身の財産ではなく他人(大家)の財産であるため、他人の財産に対し保険を掛けることはできないからです。
賃貸住宅の入居者が加入する火災保険は、「家財」を保険の対象として、借家人賠償責任と個人賠償責任の特約をセットする契約が一般的です。
他方、オーナー(大家)が所有する賃貸住宅に掛ける火災保険は、「建物」のみを保険の対象とし「家財」は保険の対象にはしません。家財は他人(入居者)の財産であるためで、自身の財産である建物のみに保険を掛けます。
オーナー(大家)の中には、「入居者が火災保険に加入しているので、火災保険は必要ない」と勘違いをしている方がいらっしゃいますが、上記の通り、入居者が加入している保険はあくまで自身の「家財」と借家人賠償責任特約です。入居者に責任の無い放火や近隣からのもらい火などで火災事故が生じた場合、補償されません。
自身の財産に対しては、自身で火災保険に加入して守ることが原則となります。まずは、そのことを理解するのが必要です。

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明記物件について

明記物件とは「1個または1組の価額が30万円を超える貴金属、書画・骨董品・美術品等」をいいます。
家財を保険の対象とした火災保険契約であっても、明記物件は補償の対象外となる契約が一般的です。明記物件を補償するには、家財とは別に、明記物件を保険の対象として申告する必要があります。
例えば、時価額80万円のダイヤの指輪と時価額50万円の絵画を所持している場合、両方とも明記物件となるため、申告いただき、家財の保険金額とは別に「明記物件:130万円」の保険金額を設定し契約します。

新規で保険を検討する場合、明記物件について保険会社によって取扱いの規定が異なるため、注意が必要です。原則、明記物件の申告は必要ですが、保険会社によっては、家財を保険の対象としている火災保険契約では明記物件についても自動補償をする会社(明記物件の申告が不要)や、明記を忘れていた場合の救済措置として限度額を上限に補償する会社もあります。
明記物件を多く所持されている方は、保険比較のポイントとなるため、保険会社の特徴を把握することが大切です。

各保険会社の明記物件の取り扱いについて

保険会社/商品名 規定
あいおいニッセイ同和タフ・すまいの保険 申告が原則。
救済措置として、1個または1組ごとに100万円を限度に補償。
AIG損保ホームプロテクト総合保険 保険の対象に家財がある場合、1回の事故につき300万円を限度に自動補償。
盗難の場合、1回の事故につき300万円かつ1個または1組ごとに100万円を限度。
セコム損害保険セコム安心マイホーム保険 申告が原則。
救済措置として、1個または1組ごとに30万円を限度に補償。
損保ジャパンTHE すまいの保険 100万円までは自動補償。
100万円超1,000万円以下の場合は「300万円、500万円、800万円、1,000万円」より保険金額を選択。
1,000万円超の場合は、詳細を申込書等に明記の上、ご希望の保険金額を設定。
日新火災海上住宅安心保険 保険の対象に家財がある場合は100万円を限度に自動補償されます。
500万円または1,000万円に増額して設定することも可能です。
「盗難」の事故の場合は1個または1組ごとに100万円が限度、「破損・汚損等」の事故の場合は1個または1組ごとに30万円が限度となります。
また、1回の事故につきお支払いする保険金の合計額は、高額貴金属等の保険金額が限度となります。
東京海上日動トータルアシスト住まいの保険 保険の対象に家財がある場合、合計100万円を限度に自動補償。
特約により明記物件限度額500万円、1,000万円の選択が可能。
三井住友海上GK すまいの保険 申告が原則。
救済措置として、1個または1組ごとに100万円を限度に補償。
楽天損害保険ホームアシスト 申告が原則。
救済措置として、1個または1組ごとに30万円、1回の事故につき100万円を限度に補償。

明記物件となる物ならない物

単に、1個または1組の価額が30万円を超える財産が明記物件となるわけではありません。普段使用しているブランドの腕時計やバッグ、洋服などは30万円を超えていたとしても、明記物件ではなく家財として考えます。明記物件となる物は、貴金属や書画、骨董品などです。したがい、装飾された観賞用(実用ではない)の腕時計は明記物件となるため、注意が必要です。

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火災保険の免責と免責金額

免責とは、「保険会社が保険金支払いの責任を免れること」つまり、「補償されないこと」をいいます。
免責となる事故、事柄を「免責事由」といい、重要事項説明書や約款に記載されています。主だった免責事由については、パンフレットにも記載があるので、契約前に必ず確認をしておきましょう。

主な免責事由

  • ご契約者、被保険者(補償を受けられる方)、その同居の親族またはこれらの方の法定代理人等の故意もしくは重大な過失または法令違反によって生じた損害
  • 戦争、革命、内乱等
  • 地震・噴火またはこれらによる津波によって生じた損害(保険の契約内容や損害状況によっては、地震火災費用保険金をお支払いする場合があります)
  • 地震等によって発生した事故の延焼または拡大により生じた損害や火元の発生原因を問わず地震等によって延焼または拡大し損害(保険の契約内容や損害状況によっては、地震火災費用保険金をお支払いする場合があります)
  • 風、雨、雪、雹、砂塵等の建物内部への吹込み、浸込みまたは漏入によって生じた損害
  • 給排水設備事故に伴う水濡れ等の損害のうち、給排水設備自体に生じた損害(保険の契約内容や損害状況によっては、水道管修理費用保険金等をお支払いする場合があります)
  • 保険の対象が通常有する性質や性能を欠いていることによって生じた損害(いわゆる欠陥住宅)
  • 自然の消耗または劣化によって生じた損害
  • 平常の使用または管理で通常発生し得る、すり傷、かき傷、塗料の剥がれ落ち等の単なる外観上の損傷や汚損であって、その保険の対象が有する機能の喪失または低下を伴わない損害
  • など
  • 上記は、あくまで各保険会社共通の一般的な事由です。実際に事故が生じた個別の事案については、契約の保険会社または代理店へお問い合わせください。

免責金額

免責事由と似た用語に「免責金額」があります。免責金額とは、保険適用事故が生じた際に「損害額から差引かれる金額」と理解ください。

火災事故による建物の損害額が50万円で免責金額が5万円だった場合、保険金は下記の通りに計算されます。

「支払われる保険金」=「損害額:50万円」-「免責金額:5万円」=45万円

免責金額を設定すると、事故が生じた際に支払われる保険金が減額されるため、保険契約時の保険料(掛金)は安くなります。保険会社によっては、補償項目ごとに免責を設定できるため、リスクの大小などを考慮し、免責金額を設定することにより保険料を抑えることができます。

  • 設定可能な免責金額については、保険会社により異なるため、詳細についてはお問い合わせください。
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構造級別の判定

火災保険の保険料を見積もる上で、「構造級別」の判定は非常に重要な事項です。構造級別を誤ってしまうと、見積の金額が倍くらい違う場合もあります。

住宅用火災保険における構造級別の種類と主な建物構造

M構造
鉄筋コンクリート造りの共同住宅(分譲マンションなど)が該当します。
T構造
鉄骨造、鉄筋コンクリート造の一戸建て、準耐火建築物、省令準耐火建物等に該当する建物 など
H構造
M構造およびT構造以外の物件(一般的な木造の一戸建てなど)が該当します。
  • 経過措置契約(K構造など)は省略しています。

保険料は、「M構造」<「T構造」<「H構造」の順に上がっていきます。T構造とH構造とでは、地域によっては保険料が倍近く違ってきます。木造の建物であっても、準耐火建築物や省令準耐火建物に該当する場合、T構造となるため、保険を掛ける物件がどの構造に該当するか確認が必要になります。
尚、T構造となる火災保険契約の場合、所定の確認資料が必要になることがあります。また、保険会社によっても異なるため、詳細はお問い合わせください。

構造級別T構造の確認方法

準耐火建築物

建築確認申請書四面の「耐火建築物」欄に記載があります。「その他」となっている場合は、該当しません。
引渡し前の物件の場合は、施工業者が所持しているので、確認ください。尚、準防火地域に3階建ての物件を建築する場合、準耐火建築物となります。法律で定められていることなので、その様な物件を建築予定の方は、建築確認申請書をチェックしてみてください。

省令準耐火建物

公的な書類への記載義務が無いため、建物の図面や仕様書、パンフレットなどをご確認ください。それらに記載が無い場合は、施工業者等へご確認ください。尚、「2×4工法」、「枠組壁工法」の物件が省令準耐火建物に該当するケースが多いため、その様な物件を建築予定の方は、施工業者に確認ください。

鉄骨造でもM構造に該当するケース

鉄骨造の共同住宅(アパート、マンション)であっても、「耐火建築物」の物件の場合、「M構造」となります。
準耐火建築物同様に建築確認申請書四面で確認できますが、以下の条件に該当する場合は、確認資料無く手続できます。

  • 地上4階建て以上で地上3階以上が共同住宅である鉄骨造建物

賃貸アパート、マンションに該当するケースがあります。上記に該当しているのに、T構造で契約されている方は、一度ご相談ください。

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建物の評価

建物を保険の対象として火災保険の見積りを行う場合、建物の評価は必ず行わなければなりません。
現在各保険会社で販売している住宅用の火災保険では、「再度、同様の建物を建築するのにどのくらいの金額がかかるか(再調達価額)」ということが評価の基準となります。評価額を保険金額として設定していれば、万一、建物が全焼してしまった場合であっても、同程度の建物を再建築することができます。

火災保険の見積の流れ

  • 物件の申告
    (告知)
  • 建物の評価
  • 補償内容の
    設計
  • 保険料計算
    (見積り)

したがい、正しく物件情報を申告して頂かないと、正しい評価が出来ないため、正確な見積りをお出しすることが出来なくなってしまいます。物件情報については正確にご申告ください。

建物の評価方法

建物の評価方法には、「年次別指数法」と「新築費単価法(概観法)」の2種類の方法があります。

  • 稀に「お客様の申告」などその他の評価方法を採用するケースもあります。

年次別指数法

土地代や共用部の費用を差引いた新築当時の建物の金額が分かる場合、その金額に経過年数による物価などの価格変動率(建築費倍数)を乗じて計算します。

建物評価額 = 新築当時の建築価額 × 建築費倍数

尚、新築の物件を評価する場合、建築費倍数は「1」となるので、建築価額がそのまま評価額となります。

新築費単価法

1平方メートルあたりの新築費単価に物件の延床面積を乗じて計算します。新築費単価は構造級別と都道府県により異なります。

建物評価額 = 1平方メートル当たりの新築費単価 × 延床面積

算出された標準的な建物評価額を基に、必要に応じて実態にあわせた調整を行います。

前途の通り、上記で算出された評価額は、再調達価額を基準に計算されています。評価額と同額の保険金額を設定頂くことが望ましい契約となります。
尚、評価額を超える保険金額を設定することはできませんが、評価額以下の保険金額の設定は可能です。
(※保険会社によって、設定可能な保険金額は異なります)
大型のマンション一棟など全焼、全損リスクの低い物件については、あえて、評価額通りの保険金額を設定せずに、ある程度、保険金額を下げて保険料の調整を行うことをお勧めすることもあります。

評価額に対する保険金額の設定は、物件やお客様の状況、考え方により変わってきます。保険金額の設定で迷われている方は、一度ご相談ください。

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保険期間の決め方

新規で住宅用の火災保険を検討されている方の場合、原則、設定可能な保険期間は「1年間~5年間」までの整数年となります。保険期間1年間と2年間~5年間の長期契約の保険料を比べた場合、長期契約にはそれぞれの期間に対し「長期係数」が設けられており、より長い契約期間の方が保険料は割安になります。

1年間の火災保険料が10,000円 長期係数が、3年:「2.7」、5年:「4.4」 の場合の保険料

  • 3年間一括払保険料:27,000円
  • 5年間一括払保険料:44,000円

長期契約の場合の保険料改定について

各保険会社では、数年に一度火災保険料の改定を行っています。
過去の例を確認すると地域にもよりますが(保険料率は都道府県別に設けられています)、全体的に保険料は上昇傾向にあります。仮に今年、保険期間1年間の新規火災保険に加入し、保険期間中に保険料改定(保険料の値上げ)が行われた場合、翌年の満期時には値上げした保険料水準での更新手続きとなります。
しかし、仮に今年5年間の新規火災保険契約に加入した場合は、保険期間中に保険料改定(保険料の値上げ)が行われたとしても、保険期間中に追加保険料を支払う必要はありません。次回の満期時(5年後)まで、契約時点での保険料が続きます
保険料改定前に長期契約に変更するお客様が多いのは、上記理由からです。尚、現在火災保険を検討している方は、今後、保険料改定の予定が無いかを確認した方がよいでしょう。

長期契約のデメリット

前述の通り、長期契約とした場合には「保険料が割安になる」、「保険期間中は保険料改定の影響を受けない」という2点のメリットがあります。そのためか、何かデメリットがあるとお考えの方が多くいらっしゃいますが、これといったデメリットはありません
しいて挙げれば、「保険料が安くなった場合にも影響を受けないため、満期までは高い水準のまま」となります。しかし、これも前途の通り、保険料が値下げ傾向にないため、考慮しなくてもよいでしょう。
また、長期契約の場合、「保険を見直す機会が少なくなる」ということもいえますが、新規契約時にしっかりと補償内容を設計すれば、増改築をしない限りは、頻繁に見直しが必要な類の保険ではないといえます。

仮に5年間の長期一括払契約の火災保険に加入し、2、3年後に物件を売却して火災保険を解約したとしても、未経過分の保険料は解約返戻金として返還されます。
総括としては、まずは、補償内容や保険金額をしっかりと設計した上で、予算内で可能な限り長期の保険期間を設定することが望ましいといえるでしょう。

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